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手術、終了!

春過ぎのマンモグラフィの結果、胸に良性の物質が出現していた話は前回の記事に挙げたが、あの検査以降、その切除の前に一応MRIを撮っておこうという話になり、MRI検査を受けると、さらに新しい発見が!1度目の生検を受けた右側の胸と、そして、左胸の両方に再び生検を受け、何やら針であちこち刺されて標本の蝶々になったような気分であったのが8月の終わり頃。

そして、今年の夏は長く、9月になっても気温が30度を超えることがあったが、その9月初旬に入ってきた結果が、左胸のものは悪性であるとのこと。右胸にはAtypical Ductal Hyperplasia(異型乳管過形成)とRadial Scar(放射状瘢痕)、左胸にはDuctal Carcinoma in situ(非浸潤性乳管癌)なるものが出来上がっていた。すべて触れない大きさのもので、奥深くに隠れているため、自覚症状はなし。DCISもステージ0で、去年は見つからなかったのだから、出来立てホヤホヤの時期だったのかもしれない。

英語でも日本語でもこの3つを揃えて覚えるのにかなり苦労した私…医療従事者の皆様、こうした用語を沢山記憶されておられて、ご専門とはいえ素晴らしい!

乳腺外科医の意見を聞くため予約を入れ、医師に出会う前には、乳癌経験者の母を持つ私は、全摘をした方が良いのかも…などと一応考え、全摘の場合はどうせ元々胸がないに等しい体型だから、再建など面倒なことは考えず、フラットで一生過ごそう!とそこまで覚悟して外科医とのアポイントメントへ。が、全摘でも温存でもステージ0であるので、「どちらでも好きな方を」という感じの外科医のアドバイスであったので、それならば、わざわざ今から全摘をせずとも良いかということで、ランペクトミーを選択。

そして、遺伝子テストも受けられると聞いて、無駄に不安がるより自分の遺伝子がどんなものか、これは受けるに越したことはない、とこちらも同じ日に血液を採取して検査してもらう。結果はネガティブ。突然変異で癌が発生するタチではないということで、母と同じ癌になったとはいえ、私の癌は遺伝性のものではなかった。これにて、ランペクトミーの後、将来的に同じ場所が癌化する確率はかなり低下したため、予定通りの手術で決行してもらうことになった。

その手術日がおとつい、10月22日、(まったく関係ないが)日本では新しい天皇の即位の日であった。夫が数日前に風邪をひいてしまい、咳で彼も私も眠れない夜を過ごし、手術日を睡眠2時間で迎えてしまうというハプニングはあったが、おかげで麻酔の前から朦朧とした状態の私は、それまでも緊張感はなかったが、当日はさらに緊張感のないまま手術を受けられた。付き添いの夫のほうが元気が悪くて患者のように見えたが、風邪にもめげず、最後までよく頑張ってくれた!サンキュ~!

朝8時半に病院に行き、ワイヤーローカリゼーションというものを受け、午後1時45分から手術。麻酔から目覚めたのが4時半ぐらいで、夕方6時にはデザートを買って(爆)家に戻っていたので、とてもスムーズな手術日だったと言って良いだろう。さらに、翌日からは仕事にも戻って、普段通り、締め切りを気にする生活に戻っている。ボンドで留められている傷口が少々痛みはするが、キャンサーフリーになって、今はとても幸せな気分である。

この後、癌の再発を防ぐために放射線治療が必要かもしれないが、これで10年、20年後に癌となったかもしれない部分が(今のところ)全てなくなったというのは、とても有難いことである。母も私と同じ年齢で同じ検査を受けていれば、ステージの高い癌になることなく、もっと楽な治療で済んだかもしれない、と考えると、21世紀のこの時代に生きさせてもらっていることに、本当に感謝の気持ちで一杯になる。さらに、ひと昔前には乳癌は不治の病であったことを考えると、遺伝子検査も含め、様々な生検方法や手術方法などが飛躍的に発展しているのを自分の体を持って経験できて、非常に感動させられる。

もちろん、私が受けた治療をすべての人が受けられるという訳ではないので、その点では、自分がこうした最先端の医療の恩恵を受けられる特権を持ち得ていることにも感謝したい。この特権は私が勝ち取ったものというより、今まで、たまたま生まれ落ちた世界のおかげで、そして、私を支えてくれる周囲の人々のおかげで与えられているものである。

現代の先進技術、手術まで、そして手術中に私のために懸命に治療をして下さった医師やその他医療関係者、家族や友人の支えがあって、私の寿命は今回、確実に伸ばされたのである。この余分に与えられた命を大切に使わせてもらいたいと思う。人類の発展のために、というような大きな目標に向かって何かを遂げられるような力は持ち合わせてはいないが、与えられた健康、人生を世に還元できるように、自分のできることを頑張りたいと思う術後の今日である。

執刀前にベッドを訪ねてくれた外科医が、私の胸に手術用にサインをした後、このペンをお土産にくれた。巷の文房具屋では売られていないノベルティ(笑)。