一時帰国で感じたこと

3年ぶりの日本一時帰国…風邪で余韻を味わう暇もなく、仕事も年末にかけて大量に押し寄せてきたため、訪問記録もアップできずに終わっているが、忘れないうちに日本について旅行中に気付いたことを少々。3年前に夫と継娘を連れて日本に戻った時には、アメリカに移ってまだ2年しか経っていなかったからだろう。カルチャーショックはほとんど受けなかったが、今回は浦島状態に陥っている点が少なからずあり、自分が否応なしにアメリカ化していることに改めて気付かされた。

では、まずファッションから…

1.お洒落

日本人は全般的にお洒落である。老若男女、近所に出かける際も何かしらお洒落に気を配っているのがうかがえる。それは分かってはいたが、私は今回、完璧にファッションセンスのない(というより、アメリカナイズされたファッションセンスの)服しか持って帰らず、妙に浮いた格好で歩き回ることになってしまった。夫と一緒ではない時でも店で英語や中国語で話しかけられるという事態もあり(苦笑)、よっぽど日本人的姿ではなかったのだろう。

どこへ行っても観光客の列でディズニーランド化している京都では、日本人より海外の観光客のほうが多いような状態であるため、自分の服についても気にならなかったが、観光客がそれ程いない大阪では、私と夫2人で「観光中」を多いにアピール。我々にとっては普段の外出時に着ているものだが、Rochesterでは結構、普通路線の「おでかけ着」が日本では「山歩きの装い」に一転。(日本で山歩きをされる方は、これまたアメリカでハイキングをする人に比べると格段にお洒落なので、一緒にするなというクレームが来そうではあるが。)

そして、コンサートに行く予定も入れていたのでドレスらしきものをわざわざ購入して行ったのだが、こちらは色で即アウト。日本の秋冬物は黒っぽい衣類が圧倒的であるのを忘れていた。派手な赤地に黒の大きな花模様など、街中を見回しても全く見かけない。精神的にはまだ少し日本人である私は、一応周囲との調和を考えて、このドレスはお蔵入りならぬスーツケース入りにしてしまった。

それにしても、今までは考えたことがなかったが、どうして日本人は特に秋冬になると地味な色しか着なくなるのだろう?大阪の女性の衣装は概して派手だというが、それでも完璧に黒っぽいと感じた。別にヒョウ柄やキラキラの服を着用すべきだと推進するわけではない。もう少し色物を取り入れたほうが活気が出るのに残念なことである。

ちなみに、今回初めて、日本ではレギンスだけでは外を歩き回らないことも発見!皆さん、レギンスはパンティストッキングと同様の着用方法をしておられる。確か、以前にはレギンス+チュニックという組み合わせもあったのではないかとも思ったが、あのファッションはもう廃れたのだろうか?とにかく、エクササイズ用のピッチピチのレギンスだけで体型あらわに歩き回っているRochester(アメリカの他の地域でも似たような場所は多いはず)の女性とは違い、レギンスの上に長いスカートを履くのが今の日本風なのだなと妙に感心してしまった。

この点でも、長いスカートが旬であるなどと分かっていなかった私は、膝上丈のスカートしか持ち合わせておらず、レギンス+ミニスカートという格好で異邦人の雰囲気をアピールし続けていた。スカートだけでも持っていて良かったが、ミニスカートで夜遅く一人で外を歩いている時には、痴漢に遭うのではないかと恐怖を感じたのも事実。日本人女性の控えめなファッションの裏には、そういった「目立つと襲われる」という負の面も大きく作用しているのかもしれない。

2.「ミセス」という範疇

お洒落好きな継娘のために、クリスマスプレゼントにする衣類を日本で買うことにした夫と私は、滞在の最終日に百貨店に出かけた。梅田やミナミ付近の小さな店も覗いてはいたのだが、可愛い服は沢山あっても、悲しいかな、サイズが全くない。継娘の背丈は、日本人平均身長の私と同じ位ではあるが、日本の(特にセンスの良い)衣類は全般的に細身であるため、彼女が着れそうなものがない。アメリカでは、私ぐらいの身長までであればPetiteの「P」が付いたサイズがあり、その中で横幅に合わせてPXXSからPLまで何段階にも分かれているため、身長+横幅に合わせてサイズを選べるが、日本では幅が欲しければ縦まで長くなくてはいけない。普段からオーバーサイズの幅の服を買いたがる継娘に合うものは全く持って見つからなかった。

そういうことで百貨店に行けば「大きなサイズ」というセクションもあるので、何か見つかるだろうと安易に考えていたが、これが大きな誤算だった。「大きなサイズ」の売り場に到着すると、夫が「変な感じの服ばかり」だと言う。それもそのはず、私の母の世代以上をターゲットとした地味な服が勢ぞろいしている。

仕方なく、その隣にある普通サイズの売り場に移動。そこでセールになっているコートを目にして、「継娘に似合うかも?」と一つを手に取ってみた。すると、日本の百貨店の店員らしく、2人もの店員が同時にすかさず反応してくれる。ギフトを探していると言うと、次にこう聞かれた。「何歳の方ですか?」と…ここで、ようやく封印されていた記憶が蘇ってくる。日本では洋服を買う時に年齢を基準に決めるのであった!

この当たり前過ぎる日本的感覚がストンと抜け落ちていた私。この時に初めて自分たちが買い物をしようとしているフロアが「ミセス」向けのものであることに気づいた。と同時に、この日本の慣習に対して嫌悪感がジワジワとこみ上げてくる。このコートが似合いそうな人物がいるから手に取って見ているのに、別に何歳でも構わないのではないか?と。一定年齢層の服しか売らないとは、これは深刻な年齢差別である。

だが、まあ、そこで売り場が年齢差別をしているなどとウンチクを語っても仕方がないので、店員の質問に「ティーンエイジャーです」とサラっと答えてみる。すると、驚愕した(笑)店員は夫が手にしていたコートを元のハンガーにそそくさと戻して、「それだったら、こんな服要らないですねぇ」とのたまう。「こんな服」を喜ぶティーンもいるかもしれないのだが?それ以前に、「こんな服」であるのなら、店で売るのはよろしくないのでは?

その店員から離れて、付近でもう少し何かないかと探してみるが、そのたびに声をかけられる。「何歳の方ですか?」と。

この質問に憤り過ぎてしまった私は、サイズ的にぴったりのものが見つかりそうな気配だったが、別のフロアに行ったほうが良いのではないかと夫に進言。今だに「ミス」と「ミセス」の区別をしている後進国日本の状況に、夫は呆れているようだったが、私は久々にこんな年齢差別を体験して腹が立って仕方がなかった。英語の教科書ではずっと前に「Miss」と「Mrs」の区別が廃止されているのに、アパレル界ではこの区別がなぜ健在なのだろう?

この後、明らかに若い世代をターゲットにした売り場で探しに探した結果、継娘に合いそうなものが見つけられたのは幸いだったが、今でも「何歳の方ですか?」というあの質問を思い出すと怒りが沸々と蘇ってくる。次に日本に帰国するまでには、「ミセス」売り場が消えて、全てが婦人服になっていて欲しい。カテゴリーは年齢別ではなく、紳士服売り場と同様、用途別にするだけで十分。年齢に応じた服装などというのは、お客が自分で判断すれば良いもので、大きなお世話である。

 

次に、ファッション以外で感じたこと…

3.お辞儀

久々に日本人を沢山見ると、「皆、よくお辞儀をするなぁ」と思ってしまう。当たり前のことだが、普段見ない光景なので新鮮に感じる。ANA便では、アナウンスでフライトアテンダントの一人による着陸前、最後の挨拶が流れている時に、「ご搭乗ありがとうございました」の言葉と共に、着席している他のフライトアテンダント全員も背筋を伸ばしてお辞儀をしているので、面白く感じてしまった。また、とあるスーパーでは、冷蔵室に入って行く店員が、誰も見ていないのにわざわざ扉の前で売り場に向かって一礼をしているのを目撃した(目撃したのだから、私が見ていたことにはなるが)。テレビでもアナウンサーが番組の間に何度もお辞儀をするし、これを特異なことに感じてしまう辺り、私が日本の慣習から離れて行っている証拠なのだろう。

4.タバコ

あちこちで禁煙に関する条例が出来ていることを耳にしていたので、今回はタバコの煙に悩まされることがないだろうと期待していたが、見事に期待が裏切られた。京都でも大阪でも歩きタバコをする人が非常に多くて迷惑である。どこからともなく、タバコの臭いが漂ってくる。カフェやレストランでも「喫煙室」を設けていながら、喫煙と禁煙スペースの間に仕切りがない店がある。何を考えているのやら…。駅や空港の喫煙室にベビーカーと一緒に入って行く親もいて驚いた。まだまだタバコの害に対する教育が徹底されていないようである。

5.音

これも以前は全く気になっていなかったことだが、静かな環境に住んでいるためか、日本は大音量の音に囲まれているような気がして、少し落ちつかなかった。特に駅では、列車が近づくと共にアナウンスがあり、音楽が流れ、列車が到着するとその内外でアナウンスがあり、発車すると共にさらに音楽。合図は必要だが、もう少し音量を落としても大丈夫なのではないかと思うことが多々あった。スーパーでもエレベーターでもトイレの中でも、人間の生の声ではなく、それ以上に電子的な音楽やアナウンスが大量に溢れている日本である。

6.エレベーター

関西には(観光地の京都ですら)エレベーターが少なすぎる。今回は幼い子供連れの友人と一緒に時間を過ごしたこともあり、我々も宿の移動ごとにスーツケースを運ばなくてはならず、エレベーターを幾度となく使わなくてはならなかったが、その度に、まず探すのに時間を取られ、さらにはエレベーターがとてつもなく不便な場所にあるため、大回りをしなくてはならず、非常に不便だった。高齢者人口が増え、明らかにエレベーターの利用人口は増えているはずであるのに、設置が間に合っていない。特に各鉄道会社、もっと頑張っていただきたい。

7.ベジタリアン料理

地域差もあるが、今回も外食では苦労した。日本では「ベジタリアン」というと「野菜中心の料理」程度にしか捉えられていない店もいまだに多く、ダシにはほとんど魚介類やその他肉の粉末などが入っている。スイーツであっても頻繁にゼラチンなどが含まれており、完全なベジタリアンの食べ物を探すのが難しい。ベジタリアン料理を出すレストランは夜には開いていない所も多く、Googleの助けを借りても、値段的にも適当な食事処にたどり着くのは今回も骨の折れる作業だった。

レストランやカフェが画一的な方針を取っているのも困る。例えば、これはベジタリアンに関することではないが、あるカフェでケーキに付いてくるバニラアイスクリームをチョコレートアイスクリームに変えて欲しいと言うと(メニューにはチョコレート味もあったため)、「今回だけ例外で」と念を押された。バニラとチョコの値段が違うのなら、その差額は払う用意はあるし、そんな嫌な顔をしなくても、と思うのだが。なぜかメニュー内容を変更することを渋る日本のお店が多い。

8.タクシー

日本のタクシーは小さい(爆)。スーツケースをトランクに1つ入れると、それだけで一杯になってしまう。この事実も以前は当然のことのように受け止めていたが、大きな車が走り回るアメリカに慣れてしまうと「どうしてこんなに小さいのだ?」とイラッとしてしまう。今回は日本でスーツケースを買い足したため、計4個の大きなスーツケース、小さいスーツケース、その他諸々の荷物があり、2台に分乗しても載せきれなかった。大型車は事前予約が必要であるし、移動がイチイチ面倒なことであった。

 

今回の旅行は、スマホのおかげで以前とは違う日本滞在となった。よく知らない場所でも、ガイドブックや紙の地図を開かずとも、WiFiに繋がるだけでスイスイと目的地まで行けてしまう。次に帰国する時には、スマホも含め、さまざまな技術が進んでさらに便利になるのだろうか。楽しみである。そして、私がさらに浦島状態を深めていることも予想されるので、その点も興味深いところである。

 

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